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【吉田香織選手 対談】「30km走はもう不要!?」 サブ4の壁を破り、サブ3.5を目指すランナーのための『効率重視』トレーニングと戦略
ランナーの目標が多様化する今、フルマラソンで結果を出すためには「練習量」より「質」と「休息」が鍵となる。TEAM R×L所属の吉田香織選手が、多忙な市民ランナー(特にサブ4〜サブ3.5)に向けた、効率的かつ怪我のないトレーニング戦略と、冬場のレースを楽しむための秘訣を語り尽くします。
ターゲット明確化とランナーの新しい目標
ーーR×Lはこれまでも「尖った」プロダクトで、タイムを追求するランナーをサポートしてきました。最近、市民ランナーの目標タイムはどんな層が厚くなっていると感じますか?
吉田選手:サブ4は依然として大きな目標ですが、今はサブ3.5を目指す層が非常に厚いですね。それに伴い「サブリノ(3時間45分)」など、細分化された新しい目標も浸透してきています。R×Lのユーザー層を考えると、広く浅くではなく、このサブ3.5あたりを狙う、意欲の高いランナーに特化した情報が求められていると思います。
ーーまさに当社のプロダクトが響く層ですね。吉田選手の実績から「自分とはレベルが違う」と思われないよう、今回の対談では市民ランナーが実践できる効率を追求していきます。

11月からの効率重視トレーニング戦略
ーー11月は多くのランナーにとって、本格的なシーズンインを前にした重要な時期です。この時期をどう捉えるべきでしょうか?
吉田選手:私にとっては、10月の大規模マラソン後の「疲労回復期」と捉えることが多いです。年間でピークを1回に絞るのではなく、12月と3~4月の二段階ピークを設定するのが理想。11月は最初のピークに向けた「調整期間」です。
ーー多忙な市民ランナーは、週3〜4回の練習が限界という人も多いです。少ない時間で効率的に速くなる方法はありますか?
吉田選手:質重視です。長距離を走れない夏場は、「15分ジョグ+流し」を全力でやってます。これなら時間的にも確保しやすいですし。私自身、実業団を辞めてからは「一部練習」に切り替えました。ストレッチや着替えなど、往復の準備時間を考えると、1回に集中した方が効率的で、結果的にタイムが伸びた経験があります。
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議論を呼ぶ「30km走」の是非について
ーーSNSでもよく議論になりますが、フルマラソン前の30km走は必要ですか?
吉田選手:必ずしも行う必要はありません。むしろ消耗のリスクが高い。ただし、ランニングを再開したばかりの立ち上げ段階や、2年以上のブランクがある場合は、脳に運動記憶を思い出させるために、1~2回はやっておくのがおすすめです。人間の脳はフルマラソンに近い負荷を体験しないと、本番で対応できません。
ーー女性ランナーや、疲労が抜けにくいランナーへの注意点はありますか?
吉田選手:女性は回復力の違いから、頻度は男性より少なくすべきです。また、実施するとしてもレースペースでの頑張りは避けること。LSD形式(ゆっくり長い距離)で、あくまで「脳と身体に42.195kmの準備をさせる」目的で行うのが賢明です。人間の体は消耗品ですから、無駄な疲労は避けるべきです。

失敗を避けるための「超回復」と練習の心得
ーー練習で調子が良い時、ついついオーバーペースで走ってしまいませんか?
吉田選手:それは危険なサインです!「ハーフでPBを出したのに、フルで足が攣って失敗した」というパターンは、距離走でのオーバートレーニングが原因です。距離走では「調子が良くてもレースペースを超えない」ことが大切です。
ーー練習において最も大切にしている体の感覚は?
吉田選手:「超回復」を意識することですね。練習で「心地よい疲労感」を得て、翌日の休息(あるいは軽めのジョグ)でその疲労が抜けた時、練習前よりも体が強くなっている感覚を味わえるかどうか。毎日頑張るのではなく、適切な休息を含むサイクルを途切れさせないことが、真のパフォーマンス向上につながります。
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冬場のレース対策とモチベーション維持
ーー寒くなる時期、吉田選手が特に意識する体の部位や防寒対策はありますか?
吉田選手:寒さ対策は「首」を意識すべきと言われますが、私は特に末端ですね。練習前には足湯や、足裏にホッカイロを貼るなどして、末端の血流を良くしておく。冷えた状態から急に動くと怪我のリスクが高まります。
ーーウェアの選び方はいかがでしょうか。
吉田選手:走る時は、上半身の保温を重視します。アームカバーやインナーの重ね着など。逆に、足は丸出し(短パン)でも意外と寒さに強いです。素材としては、メリノウールは冬場に手放せません。特に靴下(ソックス)は、直接肌に触れるので保温性の高いものを選ぶと快適さが全く違います。
ーー寒い中、練習がおっくうになった時のモチベーション維持法は?
吉田選手:私の場合は、「ライバルの顔を浮かべる」こと。負けないためには、寒いけど走るしかない、と自分を奮い立たせます。また、練習内容を記録する習慣も大切です。記録を途切れさせたくないという心理や、SNSなどで共有することで、コミュニティの力も借りながら継続できます。

吉田選手からの最終アドバイス
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11月に意識すべきこと
シーズン中のピークを2回に分けて計画しましょう(12月と3~4月)。11月は、最初のピークに向けて無理せず調整を進める時期と捉えてください。 -
ランニング継続の秘訣
人との繋がり(コミュニティ)を大切にすることです。昔はライバルばかりで一人で走っていましたが、今は走友会など、人と交わることで孤独にならずに練習を続けられるようになりました。
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レースへの焦りを消す方法
レース前に焦らないよう、Aプラン(目標タイム)とBプラン(下方修正のタイム)の2つの目標設定を用意しておくことです。天気やコンディションが悪くても、Bプランに切り替えれば「失敗」ではなく「想定内」となり、ネガティブにならずに済みます。
今シーズン、よりよいレースになるように、お互い頑張りましょう!
吉田香織
1999年 国民体育大会陸上1500m準優勝3000m5位
1999年 アジアクロスカントリー優勝
2002年 横浜国際女子駅伝日本代表
2006年 2016年 北海道マラソン優勝
2010年 2012年 ゴールドコーストマラソン優勝
2015年 さいたま国際マラソン日本人トップ
2017年 2018年 ハセツネ30k二連覇
2018年 サロマ湖ウルトラマラソン50km総合優勝·大会記録
2018年 富士登山競走5合目の部優勝
2019年 青梅マラソン優勝
2019年 富士登山競走5合目の部優勝
