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ソックスに穴を開けているのはワザと?サッカーW杯出場選手に見るソックス事情①
2022年11月20日に開幕したサッカーW杯カタール大会。
初の中東開催、冬の開催というだけでなく、ジャイアントキリングも多く、例年以上に熱い戦いが続いています。
そんな中、イングランド代表の試合映像で、ある選手のソックスに違和感を感じました。
ふくらはぎに穴が開いている。。どうやら、プレー中に破けたものではない様子。
決して見栄えがいいものではないのに、何故こんなことをするのでしょうか?
Ready to go again tomorrow 👊 pic.twitter.com/M5ifGlLa1e
— England (@England) November 24, 2022
R×Lフットボールテクニカルディレクターの角田壮監氏(KAKU SPORTS OFFICE)から ふくらはぎの穴開きの理由と最近のプロサッカー選手のソックス事情について話を伺いました。
角田:近年、多くのサッカー選手がセパレートサッカーソックスを好むようになってきています。
セパレートサッカーソックスとは、下腿部を覆う「セパレートストッキング」、足部を覆う「セパレートソックス」で構成されたサッカーソックスです。
従来のつま先から膝下までが一体となっていたソックスでは、
"足部はこれくらいの厚みが欲しいけど、下腿部の圧迫感が少しキツい"
というような問題に対処することが容易ではありません。
しかし、セパレートサッカーソックスであれば、足部と下腿部が分けられるので、足部と下腿部それぞれ自分にあったサイズを選びプレー中の快適化を図ることができるようになります。
ーーなるほど、現在のサッカーソックスは足部を覆う「セパレートソックス」、下腿部を覆う「セパレートストッキング」で構成されたものが好まれるようになってきたんですね。
では、「セパレートストッキング」と「セパレートソックス」について、もう少しお話を聞いていきたいと思います。
ストッキングの穴はルール上OK!ただし、注意点も
ーー今年のW杯では冒頭でお見せした写真のようにストッキングに穴を開けている選手がちらほら見受けられます。何故、ふくらはぎに穴を開けている選手がいるのでしょうか?
角田:ふくらはぎ部分の圧迫を緩和するための工夫だと考えられます。
プロサッカーチームやナショナルチームのサッカーソックスは、サプライヤー契約によりチームで統一されたものが使われます。
世界的にサッカーソックスは、シューズを履く足のサイズで製造されているので、ふくらはぎの事情は製品化に反映されていないのが一般的です。
そのため、ふくらはぎ部分の発達している選手、大柄な選手によっては、締め付けが強く圧迫されてしまいます。
また、近年ではコンプレッションを高めたセパレートストッキングやカーフソックスもあり、チームで統一されてしまうことにより、圧迫が強すぎて着用時に選手が工夫するという傾向が見受けられます。
ーールール的には問題ないのでしょうか?
角田:問題はありません。
サッカー競技規則第4条の「競技者の用具」の第2項「基本的な用具」には、競技者が身につけなければならない基本的な用具は、以下に記したものであり、それぞれに個別のものである。という記載があります。
- 袖のあるシャツ
- ショーツ
-
ソックス
テープもしくはその他の材質のものを貼りつける、または外部に着用する場合、着用する、もしくは覆う部分のソックスの色と同じものでなければならない。 -
すね当て
適切な材質でできていて、それ相応に保護することができ、ソックスで覆われていなければならない。 - 靴
本来、セパレートストッキングは、脛(すね)の長さとふくらはぎ周囲のサイズで製造されることが望ましいと考えています。
また、運動時における脛の部分のふくらはぎ部分の筋肉の動きから考えれば、ふくらはぎ側の筋肉の動きを考えずに単に筒状に編んでしまうと、プレー中にズレてしまったり違和感が生じてしまいます。
脛側は安定性、ふくらはぎ側に柔軟性を持たせることで、ふくらはぎに過剰なストレスを与えることなく、筋肉の動きを妨げることなくフィット感を生み出すことができます。
選手がソックスをセパレートで履く意味
ーーふくらはぎ部分はどの選手も同じものを履いているようですが、その下のソックスは選手ごとに違うように見えます。どういった理由からでしょうか?
角田:フットボールシーンの発展方向は、スキルフルでスピーディー、攻守に渡り高いインテンシティーでのプレーの連続性、持続性が求められます。
用具の面でもよりサッカーの攻撃的な魅力を向上させるためにサッカーボールの品質向上に加え、サッカーシューズの軽量化やプレーモデルに合わせた素材や形状、スタッド配置などのアップデートや開発が活発になっています。
選手は進化するサッカーシューズを効果的に活用するために『足とシューズの最適化』を図ることを目的に短いサッカーソックス(セパレートソックス)を着用するようになってきたと考えられます。
独特な構造のサッカースパイクを履く上での履き心地や肌触りなど、各選手が意識するようになってきたのだと思います。
アルゼンチン代表メッシ選手、ブラジル代表ネイマール選手、ヴィニシウス選手、フランス代表エムバペ選手、ポルトガル代表ロナウド選手、いずれもセパレートサッカーソックスであることで有効性は証明されていると思います。
ーー各メーカー様々なセパレートソックスを販売しているようですが、選び方にポイントはありますか?
角田:サッカーソックスをセパレートにすると、自分の好みのセパレート
ソックスを選ぶことができます。
セパレートソックスの役割は、サッカーシューズを効果的に活用するため
に『足とシューズの最適化』を図ることです。具体的には、シューズ内の足指、足裏、踵、足、足首の動きや機能を妨げずに、肌を保護することです。
そのために、セパレートソックスの役割と品質について正しく理解した上
で、自分に必要なセパレートソックスを選ぶことをおすすめします。
私が考案した完成されたセパレートサッカーソックス【LegToolSeparationSystem™】(LTSS)におけるセパレートソックスの選択方法をチャートで紹介します。
引用:完成されたセパレートサッカーソックス【LegToolSeparationSystem™】公式サイト
LTSS基準のセパレートソックスの品質となる価値判断基準
よいセパレートソックスの価値基準は”素足感覚の履き心地”です。
”素足感覚”とは、サッカーシューズを着用した時に”ソックスを感じない”こ
と。
サッカー競技に使用ができ、素足感覚であるための以下の品質5項目を意識してください。
-
競技規則第4条と大会規程を遵守
・競技に使用できるものである -
靴内の肌の保護と着用時の肌触り
・素材
・編み方 -
たるみ・ずれ・ずり落ちなし(左右別)
・素材
・立体製法 -
運動に適切な伸縮と耐久性
・素材
・編み方
・足指、足裏、足、踵、足首の機能を妨げない -
調湿調温
・汗や蒸れの対策
┗素材
┗編み方
厚みを選ぶ
その次に意識してもらいたいのは、ソックスの厚みです。
足とシューズの最適化を図る上でシューズの履き心地とわずかなフィット感を調整するのが生地の厚みです。
薄地は、シューズの完成度が高く、足とシューズのよい相性の場合に、接地面からの衝撃、ボールタッチの感触を肌感覚で感じることを求める選手におすすめします。
厚地は、シューズ着用時にシューレースでホールド性、フィット感を調整することや、足全体にわずかなクッションを求める選手におすすめします。
中厚は、薄地・厚地の両面の良さをバランスよく持ち、足とシューズの最適化を図ります。
指先形状
厚みの後に意識してもらいたいのが、指先の形状です。
円形(ラウンド)は、アッパー(甲側の感覚)への意識が高い人。
5本指は、ソール(足裏側の感覚)への意識が高い方におすすめです。
-
円形(ラウンド)
・履き慣れた感触
・足の甲側の感覚 -
5本指
・足指間の刺激と足指の感覚
・足裏側への意識
付加選択
- 滑り止め
・グリップ - アーチサポート
・アーチ保持 - テーピング効果
・捻挫予防効果
・アーチサポート - その他、機能
・パット
・消臭
サッカーシューズ選ぶようにサッカーソックスを選びましょう
セパレートソックス選びのポイントは、プレー中の靴擦れによる皮膚の炎症を予防することが何より大切ですので、シューズ内の足指、足裏、踵、足、足首の機能や機能を妨げずに、肌を保護する品質のソックスを選ぶことです。
前述のチャートを参考に、自分に合ったソックスをお選びください。
最近は、試し履きをさせてくださる店舗もありますので、サッカーシューズを選ぶようにサッカーソックスを選んでください。
近年、セパレートソックス選びのポイントが、シューズ内で”足が滑らない靴下”になっている傾向があります。
シューズ内で足が滑るのは、シューズ選びに問題があることが多いように感じます。
お住まいの地域に専門店がなくオンラインショップ等で購入しなければならない事情で専門店の優秀なシューフィッターのアドバイスをもらうことができないこともあります。
オンラインでの購入の際は、画像だけでなく、レビューや場合によっては店舗に電話でアドバイスを受けながら購入するなどの手間をかけることで、シューズの特徴を知ることができます。商品到着後は速やかにフィッティングを行い、適切なサイズでなければサイズ交換をしましょう。
オンラインショップを選ぶ際には、サイズ交換に応じてくださる店舗での購入をおすすめします。
角田壮監(かくたまさみ)
システムコーディネイター/フットボールクリエイターとして様々なプロジェクトを立案、プロデュース。社会にスポーツが持つ有益な効果を生み出すためにトップアスリートのマネジメントや次世代ニーズを見据えた魅力あるスポーツシーンの創出に努めている。
2022年〜
(公財)日本体操協会パルクール委員会委員、(公財)日本水泳連盟競技力向上コーチ委員会スタッフ
2018.9-2021.10 LDH JAPANアスリート部門統括責任者
2017-2018 東京ヴェルディBSチームディレクター
2013-2018 ラモスプロジェクトディレクター
2012 第1回東京都ユース(U15)フットサルリーグ代表
2007 JFAサッカーコーチB級取得
指導者として2003 全日本ユース(U15)フットサル大会 東京都大会優勝など、優れた指導歴を持つ。
2002 アシックスフットサルシューズ・カルチェット、デスタッキシリーズ考案
1997ビーチサッカー世界選手権リオデジャネイロ大会日本選抜スタッフ
ほか、経歴多数