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【吉田香織の考え方】大迫選手日本記録に見る、マラソン選手のピークと年齢との向き合い方
大迫傑選手が男子マラソンの日本記録を更新したというニュースは、多くのランナーに強い印象を残した出来事だったのではないでしょうか。
「この年齢で、まだ更新するのか」
「一度は引退を考えていた時期もあったはずなのに」
そんな驚きとともに、私自身も改めて
「マラソン選手のピークとは何か」
「年齢とどう向き合えばいいのか」
を考えさせられました。
ピークは一度きりではない
マラソンは、若さだけで語れる競技ではありません。
スピードや回復力といった身体的要素は、確かに年齢とともに変化していきます。一方で、経験値、レース勘、自分自身の身体能力への理解、そしてメンタルの安定感は、積み重ねた年数の分だけ確実に増えていくものです。
大迫選手の走りを見て、私が強く感じたのは
「ピークは一度きりではない」
ということでした。
少し前までは、マラソン選手のピーク年齢は28歳前後と言われることが多かったように思います。しかし現在では、世界を見渡すと30代後半、場合によっては40代に近い年齢でも第一線で戦う選手がいます。
トレーニング理論やリカバリー方法の進化、用具の進歩、そして何よりも「自分を正しく知る力」。
それらが、マラソン選手の競技寿命を確実に延ばしていると感じます。
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年齢に抗う?合わせる?──吉田香織の考え方
私自身も年齢を重ねる中で、トレーニングに対する考え方は大きく変わりました。
以前は
「もっと追い込まなければ」
「一番良い時と同じ練習ができなければ意味がない」
という気持ちが先行していました。
しかし今は、
「今日の体調で、何がベストか」
「若い頃と同じ練習ができない=弱くなった、ではない」
と考えるようになっています。
むしろ、今の自分に合ったやり方を見つける段階に入った
と捉えることで、より長い視点で自分自身を見られるようになりました。
無理をして一時的に調子を上げるよりも、淡々と走り続けられる状態を保つこと。その方が、結果的にレースで安定したパフォーマンスにつながると感じています。
これは、競技レベルに関わらず、ランニングにチャレンジするすべてのランナーに共通することだと思います。

今の自分に合っているか
年齢を理由に目標を下げる必要はありません。
ただし、若い頃と同じやり方に固執する必要もない。
生活リズムに合わせた走行距離、ペース設定、休養の取り方、そして身につけるギア。
すべてにおいて 「今の自分に合っているか」 を考えることが、長く走り続けるための一番の近道だと感じています。
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「足元の感覚」と年齢の向き合い方
その中でも、私が特に大切にしているのが 「足元の感覚」 です。
年齢とともに、足の状態や疲労の出方は確実に変わってきます。
そこにきちんと向き合うことは、怪我の予防だけでなく、日々のトレーニングの質を高めることにもつながります。
足裏は、身体の中でも特に神経が集まる場所だと言われています。
疲労が溜まってくると、足裏や指先に小さな違和感としてサインが現れるものです。
以前の私は、そうした違和感を「気合」でごまかしてしまうこともありました。
しかし今は、そうした小さなズレを見逃さないよう意識しています。
R×Lのソックス(特にTFRがおすすめです)を履いて走っていると、足とシューズの一体感が高く、接地の違和感や左右差に早く気づくことができます。
それが「今日は無理をしない」という判断につながり、結果として大きなトラブルを防ぎ、安定して走り続けるための支えになっています。
年齢とピーク、その先にある走り
大迫傑選手の日本記録は、単なるタイム更新ではなく、
「年齢に縛られない挑戦は、まだまだ可能だ」
というメッセージだったように感じます。
同じように、市民マラソン界に衝撃を与え続けているレジェンドランナー・弓削田真理子さんの走りを見て、「年齢=衰えではない」と実感しているランナーも多いのではないでしょうか。
私にとっては、出身高校が同じ先輩後輩の関係であり、高校時代の恩師でもあります。その背中から、今も多くの刺激を受けています。
私自身も、そうした先輩方の姿に励まされながら、これからも「今の自分にできるベスト」を探し続けたいと思います。
そしてこのコラムが、読んでくださった皆さんにとって、ご自身の 「これからの走り」 を考えるきっかけになれば嬉しいです。
吉田香織
1999年 国民体育大会陸上1500m準優勝3000m5位
1999年 アジアクロスカントリー優勝
2002年 横浜国際女子駅伝日本代表
2006年 2016年 北海道マラソン優勝
2010年 2012年 ゴールドコーストマラソン優勝
2015年 さいたま国際マラソン日本人トップ
2017年 2018年 ハセツネ30k二連覇
2018年 サロマ湖ウルトラマラソン50km総合優勝·大会記録
2018年 富士登山競走5合目の部優勝
2019年 青梅マラソン優勝
2019年 富士登山競走5合目の部優勝

